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2007年08月21日

決定版!夏のサカナは涼しく食う

東日本ではぼつぼつ涼しくなってきたやに聞くが,この境港の暑さはナンダ?この痛い日差しはどうなってんだ?。海の中でサカナも海藻も茹だっている。こうなると,船で沖に行くか,清流のアユ釣りでもしない限り,私の漁獲活動は極めて停滞するのである。せいぜい夕涼みがてら堤防に出て,人のアジ釣りでも眺めながら世間バナシでビールを飲むのが関の山。ウエカツ水産も盛夏の数日間は開店休業だ。

室内温度35℃。こんなときにサカナを,どうやって食えというのだ。わが家にクーラーがあるわけじゃなし,扇風機をかけたとて,せっかく冷やした刺身を切ってもアッという間にぬるくなる。ビールも酒も然り。従って,精神状態が逆上傾向となっていけない。
こんなときは,五感に涼しげな,冷たく“ひんやり”したサカナ料理があってもいい。今回は,魚種にこだわらず,とにかく涼しくサカナを食べましょう,というお話し。
と言っても,あらいとか,湯引きとか,焼きちり,程度の涼しさでは,まあ月並みですな。求めるのは,もっとガツンと涼しいヤツだ。

長い前置きは暑くて書けないから,すぐに調理法に入る。

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魚涼味1【水なます】

夏,青空,入道雲,青い海。とくれば,水なます。というくらいに,夏にはベストマッチの,千葉県は房総半島の郷土料理。
房総の漁師料理といえば,生魚の身肉を味噌と薬味と共に包丁で細かく叩いた“なめろう”およびそれを平たくして生木の葉や青シソを貼り付けて焼いた“さんが”が有名であるが,「夏にはやっぱ,水ナマスだっぺおう!」と,房州漁師は声を大にするのである。ワシもそう思う。ナメロウやサンガは酷暑にはチト重い。

水ナマスの味わい,すなわち口中で跳ね踊る活きの良い身の粒,涼しげな薬味の香りと歯触り,旨味と共に胃袋まで落ちていく冷たい喉ごし,カランと器に触れて立つ氷の音,これら全てが夏の風物と合致しており,またそれ自身が風物と化す。まさに涼しい魚食ランキング№1と言ってよかろう。

水ナマスは,ナメロウやサンガがサカナだけにとどまらずに新鮮なイカ,アワビやバカガイなどの大型貝類でも作るのと同様,いろいろな魚介類で作成可能なのではあるが,こと水ナマスに関しては,アジとイサキ,及びこれらに類するサカナを用いる。
この2魚種に勝る素材はない。なぜなら,真夏限定の料理だからして,真夏のサカナを使うのである。これ天の道理ナリ。
では作り方を。

①用いるサカナは脂が乗っている必要はなく,むしろないほうがよい。従って,アジでもイサキでも,小さめのものでもよい。
まず鮮度第一。できれば硬直前が最高。従って釣り人に特権性がある。これを三枚におろし,血合い骨を切り除いておく。鮮度を落とさぬよう,手早く,が肝心。

②ここから先の作り方は,2つに分かれる。
A)ネギ,ショウガ,青シソ,ミョウガなどの薬味を適宜ミジンに刻み,細切れにしたサカナの身と合わせて包丁で叩き刻む。
B)同様の薬味とサカナを合わせ,味噌を若干濃いめに加えて包丁で叩き刻む。
要は,この時点で味噌を加えるか,あるいはあとから別途加えるかの違い。
活きの良さと新鮮味はAが勝っているが,Bは味噌の塩分でサカナや薬味の躍動感は多少減少するものの旨味は強くなる。
いずれもコツは「叩きすぎないこと」。しっかり魚肉の粒が感じられる程度に止める。

③Aタイプであれば,ボウルに入れた氷水に味噌を加えて若干濃いめに味加減し,叩いたサカナと薬味を加え,箸でカラカラっと混ぜて出来上がり。
Bタイプであればお椀に氷水を入れ,そこに味噌タタキを適量落として,箸でかき混ぜればできあがり。

いずれも,サカナが新鮮なほど,氷で急激に冷えることによって,身がピリッと弾けてきます。この食感がいい。
なお,使用する水は,当然“良い水”が良い。が,なければ水道水でも結構。使用する氷についても同様。できればカルキ臭がせず気泡の入ってないぶっかき氷がいい。
この料理は,“水”も調味料のひとつなのだ。

さて余談ですが,出来上がりはほとんど同じ体裁なのに,ここでなぜ,ボウルとお椀を使い分けているのでしょうか。つまり,Aは,溶き水のほうに味噌加減をしなければならないので,各自が味噌をいじくるのは面倒なのでまとめて作った方がよく,そしてBは,先に多量の水を入れてしまうと,そこに入れる原料が足りなくなる可能性もあるので,各自のお椀単位で調味加減をする,というわけ。
味覚上の違いもあると書きましたが,その他の使い分け理由として,野外など大人数でワッと食べるときにはA方式でドッと作るし,自前ないし数人でやるときにはB方式でやるのが便利でもあるのです。B方式だと,そのままツマミにもなるのでよろしい。1回で2度おいしい。

この料理は,食べ方といいますか,作法が大切。
すなわち,氷を入れてガーッとかきまぜ,“冷えばな”を一気にズルズルと音を立てて吸い・ときどき噛み・飲みくだす,ということ。まごまごしてたら氷が溶けて,味が変わってしまうのです。炎天下,小さいお椀で,3杯立て続けにおかわりしたところで,ふうとひと息つくのは快感至極。セミもやかましく鳴いてるし,木陰でそよ風も吹き出した。こいつをやらねば,夏は終われん!



魚涼味2【水 貝】

“ミズガイ”とは,不思議と涼しげな音であり,「水貝」の字面もよいではないか。
そしてこれも,千葉県房総半島を発祥とする,味覚のみならず視覚・聴覚・触覚のいずれにおいても全面的に夏の料理なのである。そしてその名のとおり,水も調味料である点において上記の水なますと共通。

夏の貝の代表と言えば,磯には女王格のアワビと歩兵格のサザエがおり,いずれを用いてもよいのだが,できれば大ぶりの「メガイ」が柔らかくて甘味があってよい。ちなみに,地方の魚市場で裏返しにしたアワビの肉の色を指して,この黒っぽいのがオス,茶色っぽいのがメス,なんてことを教えるオッチャンを見ることがあるが,信じてはいけない。
比較的殻の高さがあって楕円気味で肉表面が黒っぽいのは「クロアワビ」(東北以北ではエゾアワビ),高さが低くて円形に近く肉表面が茶色っぽいのが「メガイ」,更に最近は少なくなったが,メガイに似ているが殻の高さがしっかりあって殻に並ぶ呼吸孔がぐっと立ちあがっているのが「マダカ」という。それぞれ違う種類であり,これが日本の三大アワビ。これらの子分格に「トコブシ」がいるが,これは肉質がかなり違うので,マズイとは言わないが,あまり生では食わず,煮て食うのが旨い。
上記4種の中でも,メガイは比較的安く,入手しやすく,肉質もクロアワビより柔らかく肉量も多い。水貝にはこれを使う。

しかし,安いとは言っても,やはりアワビだ。高い。
でも,うっかりどこかで一万円札を落としてしまったことを思えば,けっこうすんなり買えるのである。なぜなら,その1万円は紛失してしまったはずのお金であり,もともと手元にないはずのお金である,と決めたのだから。金を失ったはずなのに逆にアワビが手に入ってラッキーではないか。高いサカナはこうして買うのだ。節約はほかのことですればよい。

①ガラス鉢など深い器にたっぷり氷水を入れ,粗塩を加えて濃いすまし汁程度に調味する。

②アワビは活きたものを用い,殻の間にしゃもじを差し込み,肉をはずす。

③内臓は,切り取ってブツ切りにしたら別途,小皿の酢醤油に浸しておく。これもツマミとなる。

④およそ2㎝強の角になるよう大ぶりにアワビを切って,鉢の氷水にころがし入れる。

⑤キュウリを1本分スライスして浮かべる。

これだけだ。これを料理と呼ぶのかどうか。
現に,房州では,水貝をつくる,とは言わない。水貝をやる,と言うのである。

⑥湯豆腐用の小さな網シャクシなどあれば上品で結構だが,直接箸を差し入れて,箸先に当たる氷を感じながらアワビをつまみ上げるのも涼味のうちだ。ひとつの鉢に向かい合う相手がいるとき,自分の箸を舐めたりしない心遣い,これがまたいい。心が涼しくなります。
そのまま食べてもいいし,ワサビ醤油でもよい。全部食べたあとの白く薄濁った氷水,これを飲んだりするのはおやめになったほうがよろしい。フィンガーボールの水は飲まぬほうがよいのと同じ。

この水貝の最大のポイントは,「アワビを大きく切る」ということだ。なぜか。
貝類にも神経があり,むろん痛みも感じるのであるが,我々「中枢神経系」をもつ脊椎動物とは神経構造が異なり,痛覚も触覚も全身にまんべんなく分布している。これを「散在神経系」という。従って,どこを切っても痛がるのです。そして,包丁を入れる回数が多いほど,痛い痛いと身を縮める。どんどん身が堅くなる,というわけ。だから,大振りに切る,ということになる。

その観点から,よく料理本に載っているような,「アワビを粗塩でこする」とか「ごしごしタワシで洗う」などという処置は,私は「大反対。」である。わざわざ堅くしてどうするのだ。
ハッキリ申し上げましょう。生のアワビを最も柔らかく食べる方法は,海から獲りたてのアワビの身を即座にはがして“まるかじり”することである。歯がスーッと通る。噛んでいくとミルクにも似た味わいでどんどんこなれていく。本職の海女はこれを知っている。でなければその道50年のベテラン海女が,生アワビを食えるわけがない。その流れから生まれたのが,水貝という料理だ。アワビは,指の腹で優しく手早く洗ってやってほしい。

なお,サザエで水貝をやる場合,「貝剥き」という道具を用いて渦巻きの中心奥にある貝柱を断ち切って身を取り出すか,技術がなければタオルでくるんでハンマーで割ってもよい。
内臓を切り除き,身を一周包んでいる薄い肉膜,これが苦さの根源なので,これも切り取るてサッと水洗いする。そして,身をタテに半分に切ったら,あとはアワビと同様。サザエの磯香にはワサビ醤油よりレモン醤油が合う。



魚涼味3【さつま】

「さつま」と言えば連想するのは,サツマ芋は別として,さつま揚げ?,さつま汁?
これらはいずれも鹿児島の,前者はサカナのすり身を油で揚げたもので九州では「天ぷら」といい,後者は,やはり鹿児島の,豚や鶏肉を根菜類を中心に味噌で煮た汁のこと。
ここで言うのは,愛媛県は宇和海沿岸でつくるサカナを用いた汁の「さつま」なのである。最近では観光客向けに“さつま汁”と呼ぶ傾向もあるが,現地では「さつま」は「さつま」なのであって“汁”はつけないのが普通。「伊予さつま」とも言われているが,現地ではこの言い方をほとんど聞いたことがない。
さつまは,焼いたサカナの身を、味噌と煎りゴマと共にすり鉢で擂り,ここに水と薬味を加え,これをご飯にかけて食べる汁のことだ。先述した水ナマスと違って生の魚を使うことはない。

余談ながら、この語源には,薩摩すなわち鹿児島から伝承したのでサツマであるとする説があるが,あちらのさつま汁は既に述べたように,畜肉を用いた麦味噌汁である。
近隣を見渡して似たものといえば,宮崎の「冷や汁」があり,この作り方はほとんど同じであるが,こちらの冷や汁には砕きつぶした豆腐を加えるのが特徴だ。つまり,「さつま」に似たものは「薩摩」には存在せずに「宮崎」にある。あるいはかつて,宇和島から見た対岸の九州の大地を「さつま」と総称したのであろうか??? 定かではない。
ちなみに九州の大分には「リュウキュウ(琉球?)」なる主に刺身に切ったサバを用いた一種のすりゴマ醤油漬けが存在するが,これもまた語源はナゾのままなのである。

もうひとつの説はサツマは「佐妻」であるというもので,「佐」は“助ける”の意であり,忙しい日常仕事の中で作り置き,サッと飯にかけて食えるさつまは,妻にとってはホント助かりますわ,ということ。

たしかに,宇和島沿岸を旅するとわかるのだが,リアス式に入り組んだ半島の斜面のほとんどが,かつては「段々畑」であった。一番下の道から細い半島の尾根の先端まで,両斜面が全部,海から拾った石垣で組まれた段々畑だ。この地方では「耕して天に至る」という言葉が残っている。今では放置されているところも多く,歴史を伝える迫力の写真が残るのみ。その写真集の名は,まさに「耕して天にいたる」だ。

半農半漁とはいえ,これを一家で切り盛りするのは並大抵なことではないはずだ。メシやオカズは作り置きして手の空いたときにサッと食えるものがありがたい。そういう意味で,「佐妻」説は説得力を感じるし,現地の人々が“汁”をつけずに単に“サツマ”と呼ぶのとも関係がありそうだ。真相はさておき,そうであるならば,いい名前をもらった、料理だと思う。

ま,いずれにせよだ,
さつまは,今では宇和島市街の観光レストランなどでも供されるが,もともとは郷土の家庭料理である。宇和島の遊子(ゆす)という漁師町に滞在した折り,泊めてもらったブリ養殖漁家での朝,お母ちゃんが,さつまがたっぷり入った大きなタッパーを冷蔵庫から出してちゃぶ台の上にドンと置くと,3人の子供達めいめいが,自分でご飯をよそい,各自さつまをかけてカッ込み,行ってきマースと元気に学校に飛んでいった。そして残された我々も仕事前の“さつま”をサッと食って沖へ出たのであった。
このように完全に日常に溶けている料理であり,やはりその家々によって入れるものが違ったり,作り方にひと工夫あったり,があるようだ。
ここで,宇和島のお母ちゃんに教わったさつまの作り方を紹介したい。

①カマス,アジなど,白身系のサカナを素焼きにし,その身をすり鉢にほぐし入れる。骨を除くのが面倒くさければ,あらかじめ3枚におろした身を焼けばよい。これをすりこぎでつぶし,擂り始める。

②ここに煎りゴマを加え,更に擂る。粒子がこなれたところで麦味噌を加え,更に擂る。

③粘り気が出て,逆さにしても落ちなくなったところで,擂り鉢の内側に薄くのばし,火にかざして表面を軽く焼いて香ばしさを出す。時間がなければこれは省略しても差し支えない。

④ここでお母ちゃんは,「一度沸かして冷ました水」を少しずつ注いで溶かしていく。湯冷ましを用いるのは,カルキ臭を除去するのと,もうひとつは,かつて井戸水を過熱殺菌して使っていた頃の名残であろうと思う。たしかに生ものには違いない。
水を注ぎ込む量の目安は,溶かしていきながらドロッとする程度。あまりサラサラにしてはいけない。

⑤これに糸こんにゃくを3㎝ほどに切って一度茹でこぼして冷やし、水気を切ったものを加える。これを冷蔵庫で冷やしてできあがり。ここに更にスライスしたキュウリや刻んだ青ジソを加えることもある。これも風味が良い。お好きなように。

これを,温い飯だろうが冷や飯だろうが,ぶっかけて食うのみ。
宇和島の家庭の味だ。今日も家々で、家族がさつまをご飯にかけている。
夏の朝,今日も一日働くか!という気になってくるから不思議。
そんな生活の中の食べ物です。



魚涼味4【イカの冷やしトマトスープ】

当家の過去ログ「あれやこれやのイカを食う」で,さんざんイカ料理について書いたので,もう当分はイカについて書きたくないのは事実。このお題は「トマト」が主役です。でもサカナ料理にも化けます。
夏野菜の王様トマト。露地物が出始めると味も香りも最高だ。振り返ればいつも夏の思いでと共に,常に青臭いような甘いような,お日様のような,独特の香りが漂っていたような気がする。夏に何回かはこれで冷たいトマトスープを作り,ほてったカラダを休めてやる。

①できれば露地物,のトマトのヘタをとる。

②ボウルにニンニク一片およびタマネギ1個分をみじん切りして入れ,軽く塩でもんでおく。これでタマネギの辛味はとれて甘くなる。

③ここにトマト数個をたっぷり手でよくつぶし入れ,粗挽きコショウを振り,全体をよく混ぜる。トマトの皮が残っても構わない。

④混ぜながら粗塩を加えて濃いめに塩加減する。塩の粒が残らぬように注意。

⑤ここに多めの氷を投入し,ガラガラと混ぜて,味が薄まって丁度良くなったらできあがり。

これだけ。なんだそれではトマトスープではなく“つぶしトマト”じゃないか,とおっしゃっられても結構。名前がなんだろうが,この旨さには勝てぬ。これは「食べるスープ」だ,と強弁させていただく。

ここではニンニクとタマネギを入れたが,ニンニクだけでも旨いし,トマトだけでもそれぞれに旨い。香り付けにオリーブ油少々をたらしてもよいが,トマトの香りは消える。
塩と黒コショウで味付けしたトマトの氷和え,にも見えますねえ。だが,これが合うのだ。きめを細かくしたければ,トマトをおろし器で摺り下ろしてもいいが,味は,手でつぶした方が上だと思う。お試しあれ。

⑥ここに,適当に小さく切って塩水でサッと茹でて冷やしたイカの胴身を混ぜてやると,ほーら,サカナ料理になりました。いい加減なようだけど,味はホンモノ。
夏の河原のテントの下なんかでこれを作ってたっぷり食うのはホントに旨い。

ところでこれ,房州の水ナマスのトマト版,にも見えますねえ。
おもしろいでしょ?古今東西を問わず「料理の理,は芋ヅル式」,なのです。



魚涼味5【塩マグロの冷やしかけ飯】

これを初めて作ったときには,我ながら,食って思わず唸ったものです。それほどに,シンプルながらよくできた料理になったと思う。あまりに涼しく旨いので謙遜するつもりはござらぬ。
と,もったいつけて本邦初公開。
お店経営の方,マネして出して自分の考案ですなんて言っちゃあダメよ~。
冗談ですが,早速作り方を書きましょう。

①マグロは種類は問わない。安くてボロな赤身でよいから,これを1サク買ってくる。

②サクを,繊維に添って長さ5㎝,幅5㎜前後の短冊に切る(繊維を横に切ると,あとで加熱したときにバラバラになってしまうので)。

③これをボウルに入れ,シメサバを作るときくらいの強い塩で和え,30分ほど置く。

④肉の水分がにじみ出た頃を見計らって,中鍋に強火で湯を沸かし,塩マグロを投じ,長ネギの青い部分を一束分放り込んでおく。

⑤再沸騰したら,吹きこぼれないように火加減し,ひたすらアクをとり続ける。

⑥最初は白濁したスープが,アクをとり進むほどにだんだん澄んできて,スキッと透明になったら,火を弱火にしてネギを取り除く。この時点で既にマグロから浸みだした旨味と塩分で味の骨格はできているので,補助的に薄口醤油少々と塩で濃いめに調味し,これに蓋をして鍋ごと水で冷やす。

⑦十分に冷めたら,ここに氷を投入し,かき混ぜて冷やす。最初にきつめの味にしてあるので,氷が溶けてここでちょうどいい加減となる。大きい冷蔵庫があれば鍋ごと冷やせばいいが,一般のご家庭ではなかなか難しいでしょう。

⑧椀にご飯を「少量」盛り,鍋の中のマグロを数片置き,冷たいスープを注ぎ入れ,小さく砕いた氷を浮かす。薬味にネギを刻んでもいいが,まず1杯めはこのままサクッと賞味いただきたい。これがマグロのダシだ。白い白磁の椀にうっすら黄金色の透明感のあるスープ,浮いた氷の光の散乱,横たわる塩マグロのさりげなさを噛みしめ,そして,ダシのほのかに甘酸っぱい香りのマグロ味と,氷によってキュッと締まったご飯粒ひとつひとつの歯ごたえと甘味。存分に味わっていただきたい。これがマグロの隠れた実力だ。ありがとうマグロ。

このかけ飯は,暑い夏の昼にも,酒後の飯としても,たいへん優れている。
実はコレ,当家過去ログの「もうひとつの塩煮」で紹介した長崎県野母崎流の塩煮の応用です。



魚涼味6【冷やしウナギの東南アジア】

これまで紹介してきたのが「氷」の力を借りた涼しい料理であったのに対し,これは氷を使わない,味覚の涼しさだ。パックで買ってきた蒲焼きウナギを,暑いから火を使わずに涼やかにソーメンなどと一緒に食いたい,というときのひと工夫。

熱くないウナギ料理としては,日本には古くからウナギとキュウリの酢の物である「うざく」があるし,ウナギを芯に巻いた厚焼き卵「うまき」も冷めたものを食うときがある。
ここでは東南アジアなどと言っているが,要は常夏のタイランドやインドネシアに代表される味の構成「甘くて」「辛くて」「酸っぱい」ということだ。このアマカラスッパが食欲の減退した時にウナギの滋養味とよく合うし,涼味という点では“うざく”とはまた違った良さがあるのだ。なんせ夏の国のテイストですから。

まあ、サバのリュウキュウがあるのだから,ウナギの東南アジアがあってもおかしくなかろう。などとくだらん解説してないで作り方を早く書きなさい。はい。

①市販の蒲焼きウナギは甘いタレがかかっているので,サッと熱湯をかけ流し,水でスバヤク冷やしてペーパーで水気をとっておく。

②ウナギはタテ半分に切り,それを小口に1㎝幅に切っておく。

③ボウルに豆板醤,醤油及び味噌少々,ミリン少々,レモン汁半個分を調合してアマカラスッパのたれを作る。三味のバランスは各自で加減する。ここに切ったウナギを和えて味が浸みるまでしばらく置く。

④別のボウルにウナギを取り出し,カイワレ,ミョウガ,刻みネギと共にざっくり和えて出来上がり。好みでゴマ油をひとたらし加えてもよい。

これをザクザク食うのがいいんです。ご飯にも合うし。もっともこれはソーメンの具として作ったものですけどね。冷えた皮の弾力と噛みしめる時にジワッとにじみ出る旨い脂が,イケます。

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あ~,涼しい料理を書いてたら,少し涼しくなりました。
というわけで,皆様にもこの涼しさを,おすそわけ。

ガンバッテ夏を乗り切ってくだされ。



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Posted by ウエカツ水産 at 21:15│Comments(4)魚・料理
この記事へのコメント
こんばんはッス!

>イカの冷やしトマトスープ
これは・・・
この前教えていただいたトマトスープですね!レシピありがとうございます!

イカのイタリアンスープもいいですが,
この暑さの中では冷やしスープがよりうまそうですね!

ただ,昨日はイカを求めて行ってまいりましたが,
まだダメでした。。。;;

う~ん。
この暑さと引き換えに釣れだすのでしょうか・・・。
私としては,この暑過ぎる時に冷えたスープを飲んでみたいッス!
Posted by イカロック at 2007年08月21日 22:49
イカかアジにロックオン!
頑張りますWWW

釣れなければマグロを買います。
Posted by ○月 at 2007年08月23日 05:02
イカロックさま

おっと、過去ログで紹介したシロイカのスープとは根本が違いますので、ご注意。


イカは入れずにトマトだけでも十分旨いし、また、イカだけでなく、湯引きした白身魚や、茹でたホタテやイガイなどの貝類を入れてもいいわけです。

特にこの時期、茹でて冷ました地ダコを小さめのぶつ切りにして入れるのも、季節柄最高です。このときは、1㎝ほどの厚めに輪切りしたキュウリを入れると、タコとの相性はトマトに支えられて最高潮。

だから、イカなんか狙ってねえで、タコ釣り行ってきなよ。茹で方はまた教えるから。

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○月さま

そうですね!アジだったら汎用性が高いし。ゆはりアワビまでは、、、ちょっと・・・ですよね。

塩マグロの冷やしかけは、とにかく皆様に一度は試していただきたい一品なのであります。
Posted by ウエカツ水産 at 2007年08月23日 13:45
ブログご訪問ありがとうございます!

なかなか結果の乏しい釣行を繰り返しております 汗
昨日はアジは豆アジしかおらず撃沈…
イカは5センチ程度のシンコしかおらず…
3寸エギにのるまで待ちます。
アコウをねらいますがガシラのみ…

マグロを買いに行きますwww
Posted by ○月 at 2007年08月25日 09:23
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決定版!夏のサカナは涼しく食う
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