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Posted by naturum at

2007年08月09日

真夏のサンマ

夏も盛り,早くも日が短くなりつつある8月。アユも食いたいけど,実はこの頃のサンマがいい。一尾250円くらいするか。でも買います。実際ワタクシも,本日,買いました。しかし,なぜサンマが夏なのか,という疑問もおありかと思うので,そのへんのお話しを少々。

一般的に「サンマの旬は秋である」というのが社会通念ではあるが,この夏の時期,私が待ちこがれるのは“北海道から入ってくる生のサンマ”だ。スーパーのサンマ祭りで一尾100円とか50円とかで大量に出回るのが10月頃ではあるが,今の時期の北海道のサンマは,味の上で格が違う,まず漁法からして違うのである。

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【 サンマにおける漁法の違い,およびその味 】

サンマが秋だ秋だと騒いでいるのは,よく獲れるし,安いし,脂が乗っているし,といったズバ抜けてリーズナブルな庶民性による。最近イワシが獲れなくなった,サバもいまひとつ増えてこない,などと言われている傍ら,老若男女,貧富の差なく,我々を裏切らないのが秋のサンマである。

ただ,サンマの漁期は,我々が言うところの夏から始まっているのだ。
通常,サンマ船というのは100トンクラスの大型船であるが,夏サンマを獲るのは北海道は根室に在する小型船。これは「刺し網」でサンマを獲る。船も小さいし,大量には獲れない。浮きの付いたカーテン状の網を長く洋上に流し,そこを横切るサンマが網目に頭を突っ込んで抜けなくなって捕まってしまう,という漁法なのであるが,この時期,根室沖に来遊するサンマは,これで獲る。
8月の根室沖のオホーツク海は,栄養豊富で水温の低い親潮の影響が強く,サンマは脂肪分の多い北方系のアミ類を飽食している。これが旨さのヒミツだ。ぶりぶり肥えている。秋サンマだって脂が乗っているとは言うが,その比ではない。幅が広く大ぶりで,相対的に頭が小さく見えるのが特徴。

対して秋サンマ。これは「棒受け網」という漁法で獲る。根室から太平洋側を南下して釧路,三陸沖,更に下って銚子沖まで,サンマは回遊し,これを大型船が追いかけていく。
船の一番高いところには大型のライトが設置され,それを操作してある程度サンマを集めたら,船の片側に煌々と灯りが点灯する。その反対側では,太い二本の棒に支えられた“すくい網”が,静かに水中に敷かれるのである。次に,それまで灯していた片側の灯りを徐々に消すと同時に反対の網を敷いた側の灯りを徐々に点灯していくと,サンマの群れは網の上に集まることとなる。十分サンマの群れが集まったところで,スイッチを切り替えて,一気に白灯から赤灯にすると,“ジャッ”という音をたててサンマの群れが水面に“沸き上がる”。この沸いた瞬間を逃さずに網を揚げてしまうのが、サンマ棒受け網のしくみ。

この漁法で獲られたサンマの味覚上の特徴は2つ。
ひとつは,南下するほどに,脂が落ちていくということ。
もうひとつは,網の中で大量のサンマが体を擦り合いあっぷあっぷするので,仲間のウロコを腹一杯に飲み込んでしまうことだ。
従って,いくらサンマはハラワタが旨いと言われても,棒受け網で漁獲されたサンマのそれは,小さな丸いウロコが充満していて食えば口の中でジャクジャクする。肉はなんら問題ない。

以上のように,結局,サンマ最高の「味の旬」は夏,である。対して秋は「漁獲の旬」だ。
サンマに限らず,サカナには「味の旬」と「漁獲の旬」の二つがあるということを,覚えておくと料理に活きる。更に「味の旬」について追求すると,年間を通じてみれば,多くのサカナの旬は1回ではない。大雑把に言うと産卵の少し前と,産卵後の体力を回復しきった頃の2回。たとえばイサキの旬は,夏の産卵前,まだ卵巣が熟し切っていない梅雨頃と,産卵後かなり時間がたって完全に回復した冬の頃,の2回であり,前者を“梅雨イサキ”と言うし,後者を“寒イサキ”というが,このようなことについての解説は別の機会に譲る。

それにしても,サンマが「刺身用」として出回るようになったのは,いつの頃からだろうか。ちょうど15年前,就職面接で長崎から東京に出,どこかで入った酒場で「サンマ刺身」の品書きを見て,塩サンマしか知らなかった私は注文し,食って仰天したものだ。それが,今や半ば常識のように,刺身にできる高鮮度のサンマが全国に流通するようになった。クール便の発達はこれに大きく貢献した。
ここ境港でも然り。関東に居た頃はさておき,まさか夏の時期の刺身用生サンマを,ここで食えるとは思わなかった。嬉しいが,半ばフクザツ。少なくとも“じげの味”ではないから。しかし旨い。

ここでさっそく,サンマ料理の王道である「塩焼き」について述べたい。

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【 夏サンマの塩焼き,およびその味わい 】
①刺身用の夏サンマを入手したら,まな板に置き,姿を眺め,まずニンマリと笑う。緑がかった背の群青色,豊かに幅の広い腹の銀色などを,まず,目で味わってほしい。
②しかる後に頭をつまんで持ち上げ,腹の中ほどから肛門に向けて親指と人差し指で軽くしごく。そうすると腸の後半に入っている消化物,いわゆる“糞”が肛門から流れ出るので,ここでサッと流水で洗い,表面の水気を拭く。この糞は,濃く赤みがかったオレンジ色をしている。これこそがアミ類を食べている証拠。
③塩を浅めに全体にまぶし,10分ほど置く。
④炭火で焼くのはそりゃいいでしょうが,日常ではグリルでよい。あらかじめ熱し,強めの中火に調節したら,あらためてサッと塩を振ったサンマを横たえる。グリルが小さいか,あるいはサンマが大きいか,いずれにせよその場合は,ナナメに入れればよい。
⑤焼き加減は,まず表側(頭左,腹手前)を表面が乾く程度焼いたら,裏側(頭左,腹向こう)に返し,7割焼いたら,再び表に返して焼き上げる。焼き上がりの目安は,「サンマの皮が自らの脂でこんがりしたあたり」だ。焼きすぎれば脂が落ちてバサバサになってしまうのでご用心。
⑥焼き上げたサンマを皿に移すとき,崩さないように気を付けなければならない。なぜなら,秋サンマと違って隅々まで脂が乗っているので,肉も関節も全体が柔らかいのだ。スバヤク,そっと優しく扱ってやる。
⑦皿に横たわった夏サンマは,まだチリチリと音を立てているはずだ。ここで醤油や大根おろしをかけてしまうと,せっかくの焼きたてがだいなしとなる。
すかさず箸を入れると,サクッとした箸触りがあり,一口分の皮と肉を骨から持ち上げると,ポッと湯気が立ちのぼる。これをまず,口に入れるのだ。ひとハシめは,肛門の前後がよい。なぜなら,厳密にサンマの各部位を味わっていくと,この部分が,腹の後方からしみ出した脂と肛門後方の豊かな肉感との両方を同時に味わえるからだ。最も脂が乗っており,かつ肉とのバランスがよい。肛門の前後3㎝だ。
通常,一番おいしい部分を最後に残しておく人が多いが,焼きサンマの場合,この一番の部位は,焼きたてで味わうべきだ。椀は煮えばな,サンマは焼きたて。
⑧そこから適宜両サイドに食べ進めていくわけであるが,次はぜひ横に長い腹の上の身をガサガサと腹の小骨ごと噛みしめ,それが終わったらピンクのかわいい小さな胃袋,および横に長いたっぷりした褐色の肝臓をそれぞれ味わてほしい。太く長い肝は,トロリとビックリするような味わいだ。そして,残りの内臓に,シッポのほうの淡泊な肉をまぶして食べてみることをオススメしたい。濃厚な旨いスープをパンで拭って食うのと同じ。
⑨これで片側をひととおり味わったら,ようやくひと息つけるというものだ。おもむろに頭をつまんで上に引っ張り上げれば背骨がスラッとはずれる。あとは適宜後半戦を楽しめばよい。さて,どこからいきますかな,焼きサンマの最高の味は最初に既に味わってしまったので,いくぶん余裕が生まれている。
⑩サンマを食う描写で夢中になって肝心なことを忘れていた。一般的にサンマには大根おろし,となっているし,レモンをかけたり,昨今はポン酢なんか,かけちゃったりしているが,水っぽくするだけなので,おやめなさい。
こと夏サンマの塩焼きに合わせるのは,カイワレ大根のみ,でよろしい。

ついでだから比較のために秋のサンマの塩焼きについても書いてみようか。

【 秋サンマの塩焼き,およびその味わい 】
秋サンマは夏サンマに比べて脂が落ちている。体型も若干細め。背の緑色は失せ,藍色を呈すのみ。夏サンマと比べると,腹の銀色も少々くすんでいる。が,安くて旨い,やはり庶民のサカナだ。
①前処理と焼き方は同じであるが,夏サンマほど脂は乗っていないので,“崩れてしまいそう”というようなことはない。焼き上がりを加減して,ポンと返してサッと皿に移せる。
②まず焼きたては,既に述べた「片側の肛門前後3㎝」,これは速やかに味わうべきだ。夏サンマほどではないにしろ,やはりここが“かなめ”なのだ。ただ,それ以後が夏サンマとは違うところ。まず頭をつまんで起こして背を上に維持し,頭の後ろからシッポまでポン,ポンと,押さえていく。この間,頭をつまんだまま。そこで背ビレあたりを箸先で割って頭を上方にゆっくり引っ張っていくと,スルスルッと背骨がはずれてしまう。すなわち“骨なしサンマ”の出来上がり。
③秋サンマは,既に述べたように,大群を「棒受け網」で漁獲するため,ひしめき合ったサンマは,はがれた仲間のウロコを大量に飲み込んでしまっており,従って,食べれば“ジャクジャク”するのである。というわけで,内臓は,この際,食べなくてもいいではないか。ホントの味が出ないのであるから。そのかわり,ここでひとつ,塩焼き秋サンマの旨い食い方を紹介させて頂く。
④まず,丼に6分目の大根おろしをたっぷり用意する。9分目すり下ろしたら,手を添えて軽く水を切れば6分目になる。ここに,極薄切りの秋キュウリ一本分を混ぜて,レモンないしスダチを絞り込む。ここに,先ほど骨抜きにした秋サンマの皮および身を大ぶりに砕いてドシドシ加えたら,醤油をツーッとかけ回し,ザックリ混ぜる。これが,秋サンマの「焼きナマス」。これは脂の乗った夏のサンマではクドくていけない。脂がほどよく落ちた秋サンマがいいのだ。一口ほおばれば,ホーラ,どっかから虫の声が聞こえてきますぞ! 秋の夜酒にもイイ。酒後の飯にもいい。まさに天の采配ナリ。

どうです?
結局,サンマは夏がいいとか秋でなくちゃといったことではなく,ちゃんと,季節に応じた味わいがあり,それに合わせる野菜もあり,恵まれております人間は,ということですな。

更についでながら,サンマのちょっといい食べ方を紹介しましょう。秋が来て,サンマが安くなったらお試しあれ。蒲焼き,なんてのは月並みなのでね,凝ってなくて,ちょっと気の利いたヤツを,3品。
おっと,その前に,サンマを生食するときの処理を書いておきましょう。

【 サンマのおろし方 -産地流- 】
①秋サンマを氷水から取り出したら,洗わずに,まな板に寝かせ,頭を持って,腹が上になるように立てる。
②肛門の少し後ろから包丁を入れ,頭の方へ向けて,ちょうど内臓が入っている部分をそのまま腹身ごと切り取ってしまうようなカンジで,包丁を進めていく。
③頭の付け根まで切ったら,包丁を立てて,頭を落とす。この作業によって,切り離された頭には腹身およびそれに包まれた内臓がくっついている状態,体のほうは内臓部分がズッパリ切り取られた“棒身状態”となるはず。ここで,流水でサッと洗う。
④この棒身を,頭の方から背骨に添って大名おろしで3枚に切る。
⑤刺身などで皮を剥く必要がある場合は,おろした身の頭の方の皮を指先で少しめくり,皮側を下にしてまな板に置いて皮を左手の指先で押さえ,包丁の刃,ではなく,包丁の背,を,包丁を立てて皮に押しつけて向こう側に動かしてやると,クルッと身が皮からはがれる。包丁は切る以外にもいろいろ使い方があるということだ。
この方法でやると,身の銀色がきれいなままだし,手で剥いたときのように皮に身が残ってしまうこともない。かといって,タイなどの皮を引くときのように,包丁の刃を使ってやると,皮のほうが途中で切れてしまうのである。
この手法は,他の皮が薄いサカナ,たとえばアジ,イワシ,キス,サヨリなどに効力を発揮する。
⑥皮を引いたら,身の水気をペーパーでとっておく。
⑦切り取った腹身は,頭を切り離し,内臓を取り除き,そのまま塩焼きにしてもいいし,これのぶつ切りに塩をしておいて,すまし汁にしてもよい。腹身は小骨を含んでいるので,包丁で叩いてすり鉢で擂って味噌と刻みネギを加え,団子にする人もいる。

この方法は,気仙沼や石巻などサンマの産地なら,料理屋でもオカーちゃんでも誰でもやっている。

さて,ここからがオススメ料理の部。

【 サンマの塩ナマス 】
①三枚におろして皮をひいたサンマを,シッポの方から5㎜ほどの幅でナナメに細切りにする。
②タマネギを適量スライスし,水にさらさずに,細切りにしたサンマと共にボウルに投じ,日本酒ごく少量と適量の粗塩で和える。塩加減は味見をしながらでよいから最適量をつかむこと。
③和えるうちにタマネギの辛味が消えて甘味に変わる。そこにサラダ油をごく少量たらし,再度ざっくり和えたら出来上がり。

ビックリするほどカンタンで,なんで・こんなことで・こんなに・・・,とつぶやくほど旨い。食べ残したら,少量の酢をかけ混ぜて冷蔵庫に入れておけば,翌朝醤油をたらしてご飯のオカズにもOKだ。

【 棒塩サンマの酢洗い 】
これは,石巻のサンマ漁船「大慶丸」を雇って西オーストラリア沖でマグロの調査をしたとき,そのサンマ船の乗組員が,その年獲れた冷凍サンマをこのようにして食べていた,という料理。まずは作り方。
①「サンマのおろし方」のところで述べた棒身状態にしたサンマを,三枚におろさずにそのまま指で皮を剥いてしまう。要は丸ハダカの棒身にする。
②これをサッと洗ったら,水気をふいて,粗塩を濃いめにまぶし,一晩置く。

これだけ? これだけ。
どう食べるかというと,,,
船ではこうする。大きなバットの上に大量の塩棒サンマが積み上げられ,ドンと置かれる。その傍らに,一升瓶の酢がドン,と置かれる。更にその横に,お椀がたくさん重ねられている。
食卓に着いたら,めいめいがお椀をとり,酢を注ぎ,別の皿の上で棒塩サンマのシッポをつまんで,箸でシッポ付近から頭の方へかけて身をシゴキとる。この身を椀の中の酢で洗って食うのである。こんな料理(?)であるから,見ていると食べ方もいろいろだ。少しずつ身をほぐして味わう年配の人,一気に大量に身をほぐして一気に酢に浸けてほおばる人,ソレで飯を食う人,酒を飲む人,等々。シンプルなゆえに,自由度が高い。そして,これもビックリするほど旨い。特に,身をシゴキ取ったあとの,骨についている肉をジャブリ食うのは最高だ。

とはいえ,一般家庭で長いサンマを各自が一尾ずつしゃぶるというのはどうも,というのであれば,皮を剥いた棒身を,骨ごと5㎝くらいにぶつ切りにしてから塩をしておけばよろしい。以下は同じ。

【 サンマの梅煮 】
サンマは青魚の仲間であるから,むろんサバやイワシなどと同じく酒・醤油・ミリンで煮付けてもよいのだが,ちょいと季節的に重い感じがするのだ。
秋には秋のサンマの煮物があっていい。夏の名残の爽やかさ,そして秋に至る郷愁,のような。
①サンマは頭を落とし,肛門の前で半分に切り,頭側から流水を当てて内臓を洗って抜く。尾びれは切り落としておく。
②鍋に酒と水を半々に割って沸かし,そこにたっぷりのショウガの千切りと,数の梅干しを指でつぶして種ごと加える。更に沸かし,ミリンで甘みを整える。
③ここに下処理したサンマを投じ,強火のままアクをとりつつ煮,アクが少なくなったところで弱火に落とし,薄口醤油少々で丁度良く味を整え,フタをして煮冷ます。

この煮物は,熱いヤツも悪くはないが,ぜひ,冷まして味が染みたものを,更に冷やして,味わってみてもらいたい。梅とショウガの香りがする冷たい下地をちょっと吸いながら,またその下地に箸でつまんだ肉を浸しながら,食うのは秋の悦楽と言える。

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最後に,秋の安いサンマをついつい沢山買ってきたときに,家で作るおいしい塩サンマの作り方を記して終わる。

【 自家製塩サンマ 】
①サンマは頭を落とし,肛門の前で二つに切り,頭側の切り口から強い流水を当てると内臓が抜ける。
②これらを,強めの粗塩でまぶし,一晩置く。
③焼く前に,表面の水分をペーパーで拭いてから焼く。

これだけ。
サンマには,凝ったことは一切いらない。そんなサカナだ。
こうして作った塩サンマは,焼き目の美しさ,皮の香ばしさ,肉のみずみずしさが,チガウのだ。

そして,その塩サンマを使った,おいしいおつゆを一品。

【 塩サンマのおつゆ 】
①鍋に水をはり,大根の千切りを投じ,強火で沸かす。
②沸いたら5㎝ほどに骨ごとぶつ切りにした塩サンマを投入する。
③アクをとり,それがあまり出なくなったら中火に落とし,薄口醤油で味を調える。
④そのままでもよいが,薬味として刻みネギ,摺りショウガほんの少々を加えてもよい。

これも、これだけ。

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いやー,酒から飯から吸い物まで。やっぱりサンマは庶民の味方だわ。
いいね。
  

Posted by ウエカツ水産 at 23:46Comments(13)魚・料理・水産